第九章 間隙

 熱水鉱脈から離れ、少し経った辺り。周辺には虹色に輝く、歪な結晶が沢山浮かんでいた。

それを見た少年は、結晶に駆け寄り一つ手に取って、嬉しそうにおじさんに見せる。

「おじさん、これ、オパールですよね」

 少年の手の中で、ゆらゆらと虹色に輝く白い石。少年の言葉に、おじさんはその通り。と答え、 周囲から幾つか結晶を取りながら語りかける。

「オパール…… 鉱物名は蛋白石というのだけれど、蛋白石は堆積岩の隙間に出来るんだよ。

さきほど熱水鉱床で見た石英があっただろう? あれに水分が加わると蛋白石になるんだ」

 石英に水が加わるとこの様になるのかと、少年は目を丸くする。今までずっと、石英、 所謂水晶とオパールは全く違う石だと思っていたのだ。

 ふと、おじさんが手に取った蛋白石を少年に見せた。

おじさんの手の上には、乳白色だけれど虹色が見えない物と、貝の形をした物が有る。

「おじさん、これは何ですか?」

 不思議そうな顔をする少年に、おじさんはまた説明する。

「これも、両方とも蛋白石だよ。

白くて虹色に光らないのも、蛋白石。

こっちの貝の形をした物は、貝が蛋白石になった物なんだよ」

「こんなのも、あるんですね!」

 どちらも初めて見た物の様で、少年は甚く感激している。

 貝や動物の骨の化石は、蛋白石になってしまう事があるんだよ。と言った後に、 おじさんは更に付け加える。蛋白石にはもっと沢山の色があるのを、君は知っているだろう?と。

少年も、黒いのや赤いの、青っぽいのがあるのは知ってます。と答える。

 二人は手に持っていた蛋白石を放り、また先へと進んでいった。

 

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