外伝 シロツメクサ

ある日のこと、ソンメルソが籠いっぱいの紅茶箱を持って僕の所へやってきた。

「紅茶箱要るか?石入れるのに使うだろ」

「うん、ありがとう。また使わせて貰うよ」

僕が宝石というか鉱石を集め始めてから、入れる箱をどうしようか悩んでいるという話をソンメルソにした所、 こうやってマメに空になった紅茶箱を分けてくれる様になったのだ。

ソンメルソの家ではティーオークションにかけられている色々な紅茶を少しずつ買って飲むことが多いらしく、 小分け用に使われている紅茶箱が沢山溜まっていくのだと言う。

そんな訳で、僕は鉱石を紅茶箱の中に入れて保管して居る訳なのだけれど、 どうにも紅茶箱だと蓋がゆるくて仕事で使うビーズ類は入れづらい。

紅茶箱に暫く入れて置いたのだけれど、何度かひっくり返してしまっているという話を、 メチコバールの方にしたのは何時だったか。

ある日のこと、メチコバールが籠いっぱいの薬瓶を持って僕の所へやってきた。

「薬瓶要るか?ビーズを入れるのに使うだろう」

「うん、ありがとう。また使わせて貰うよ」

メチコバールが分けてくれる薬瓶は、少し欠けてしまっていたり罅が入っていたりで薬を入れるのはどうなのか、 と言う物なのらしけれど、ビーズを入れる分には問題が無いので分けて貰って使っている。

それで、二人から紅茶箱や薬瓶を貰う様になったのは良いのだけれど、需要よりも供給の方が多く、 現在紅茶箱も薬瓶も余らせている状態だ。

どうしよう。今日また二人から箱と瓶貰ったけど、余ってるとは言いづらい……

紅茶箱も薬瓶も、何故か二人とも競う様に僕の所に持ってくるので、迂闊に断ると後が恐い気がするのだ。

取り敢えず。と思った僕は、自室に紅茶箱と薬瓶を置いて、ランチティーが用意されている部屋へと向かったのだった。

 

お茶を飲みながら母上と話している訳なのだけれど、ふと母上がこんな事を言った。

「そう言えば、ソンメルソ君やメチコバール君から貰ってる箱や瓶、余ってない?」

「え?凄く余ってますけどそれが何か?」

不思議に思って訊ね返してみると、こう言う事だった。

「アーちゃん趣味でポリープ作ってるじゃ無い?

それをお友達に紅茶箱や薬瓶に入れて渡したら好評だったのよ。

だから、またプレゼント用に分けて欲しいなって思ったんだけど」

「そうですね、ポプリ入れるのに丁度良いですね」

「そう、ポプリ」

母上がどの程度ポプリを配っているのかは判らないけれど、使い道があるなら使う人の所に行った方が良いだろう。

そう思った僕は、後ほど紅茶箱と薬瓶を幾つか、母上に渡したのだった。

 

と、言う話を、二人と一緒にお茶を飲んでいる時にしたら、何故か紅茶箱と薬瓶を持ってくるペースが上がった。

いやいやいや、どう考えてもこれって無理に余剰分出してるよね?

二人には無理に紅茶箱や薬瓶を持ってこなくて良いとは言ったのだけれど、無理はしていないの一点張り。

仲が悪いのは知っているので、お互いどうしても張り合ってしまうのだろうけれど、 こればっかりはどうしようも無いのかなぁ。

 

今日の花は「シロツメクサ」

花言葉は「私のことを考えて」

その花言葉通り、あの二人にはもうちょっと僕のことを考えて、自重して欲しいな。と思ったのだった。

 

†fin†