第三章 造岩鉱物

 苦土カンラン石が姿を見せなくなった頃、沢山の深緑色をした結晶と、黒いけれどもつやつやと光を照り返す結晶が、 少年の目に入る様になった。

 こんな宝石は見たことが無い。そう思った少年は、おじさんにこれは何なのかを尋ねる。

「おじさん、これも宝石なんですか?」

 おじさんは肩をすくめて答える。

「これは、少なくとも今は宝石では無いね。

これは玄武岩や安山岩、それと、マグマがゆっくり冷えて固まって出来る、深成岩という種類の岩の中でも、 斑れい岩と呼ばれる物に、当たり前の様に混じってる、岩を作る鉱物だよ」

 その説明に、少年は眉尻を下げる。

「うう、なんか、難しいです」

 情けない顔をしながらも石の結晶が気になるのか、深緑と黒色を一つずつ握る少年に、 おじさんが頭を撫でながら視線を合わせる。

「そうだね、岩を作る石だって思っておけば大丈夫。

それより難しいことは、中学校…… いや、高校に入ってからやるかどうかって言うくらいだから、 今は覚えなくて良いよ」

 おじさんの言葉に何とか納得した少年は、結晶を握っていた手を開く。

この結晶の名前が気になったのだ。

また、おじさんは名前を教えてくれる。

深緑の結晶が普通輝石。

黒色の結晶が普通角閃石。

 名前がわかって安心したのか、柱状の、小さな小さな結晶を少年は手放す。

すると普通輝石と普通角閃石はふわりと浮いて元有った場所へと戻っていった。

 

†next?†