熱水鉱脈から離れ、少し経った辺り。周辺には虹色に輝く、歪な結晶が沢山浮かんでいた。
それを見た少年は、結晶に駆け寄り一つ手に取って、嬉しそうにおじさんに見せる。
「おじさん、これ、オパールですよね」
少年の手の中で、ゆらゆらと虹色に輝く白い石。少年の言葉に、おじさんはその通り。と答え、 周囲から幾つか結晶を取りながら語りかける。
「オパール…… 鉱物名は蛋白石というのだけれど、蛋白石は堆積岩の隙間に出来るんだよ。
さきほど熱水鉱床で見た石英があっただろう? あれに水分が加わると蛋白石になるんだ」
石英に水が加わるとこの様になるのかと、少年は目を丸くする。今までずっと、石英、 所謂水晶とオパールは全く違う石だと思っていたのだ。
ふと、おじさんが手に取った蛋白石を少年に見せた。
おじさんの手の上には、乳白色だけれど虹色が見えない物と、貝の形をした物が有る。
「おじさん、これは何ですか?」
不思議そうな顔をする少年に、おじさんはまた説明する。
「これも、両方とも蛋白石だよ。
白くて虹色に光らないのも、蛋白石。
こっちの貝の形をした物は、貝が蛋白石になった物なんだよ」
「こんなのも、あるんですね!」
どちらも初めて見た物の様で、少年は甚く感激している。
貝や動物の骨の化石は、蛋白石になってしまう事があるんだよ。と言った後に、 おじさんは更に付け加える。蛋白石にはもっと沢山の色があるのを、君は知っているだろう?と。
少年も、黒いのや赤いの、青っぽいのがあるのは知ってます。と答える。
二人は手に持っていた蛋白石を放り、また先へと進んでいった。