後日談 バードック

デュークが死んだ後、俺は罪人として牢に入れられた。

どうしてあいつは、殺そうとした俺の事を許してくれたのだろう。

いっその事恨んでくれれば、身を裂く程の後悔はしなかったのに。

俺も死罪になって、そうしたらデュークに詫びる事が出来るだろうか。

いや、出来ないな。あいつはきっと天国にいて、俺は地獄に落とされる。

そう思いながら日々を過ごした。

そんなある日の事、俺の所にこんな話が来た。

俺の事を誰かが魔女であると告発したので、魔女裁判にかけられるというのだ。

魔女裁判。最近随分と多いと思っては居たが、まさか自分の身に降りかかるとはな。

魔女の疑いを掛けられて、生きのこる事の出来た者は居ない。

弁護人が付くという話ではあるらしいのだが、それも当てになるかどうか。

俺は話を聞き終わった後、死を覚悟した。

 

裁判の前に、弁護人と引き合わせられたのだが、その人物を見て驚いた。

俺と仲が悪い、メチコバールが来たからだ。

「何でお前が俺の弁護人なんかをするんだ」

どうせ弁護出来ないと言って、処刑を勧めるつもりだろうと、そう思った。

だが、彼は予想外の言葉を返してきた。

「デュークは死に際に、お前の事を許した。

だから、母君も父君も、婚約者であったメリーアンも、お前を死罪にするのは受け入れがたいと言っていた。

生きて罪を償って、そうしたらお前の事を許そうと」

「……お前はどう思っているんだ?」

「私はお前を許す事は出来ない。

だからこそ、お前は生きて罪を償うべきだと思っている」

その言葉を聞いて、胸が詰まった。

もし俺が魔女裁判にかけられても尚生きていられるのだとしても、罪を償えるだろうか。

何で皆、こんなに優しいのだろう。そして残酷なのだろう。

後悔がますます膨らんで耐えられなくなってくる。

思わず涙を流した俺の頭を、メチコバールが格子越しに手を伸ばし、そっと撫でた。

 

そして俺は魔女裁判にかけられた。

メチコバールは、仲が悪かったのにも拘わらず、俺の事を必死に弁護してくれた。

けれども、下された判決はメチコバールの努力を嘲笑うかのような物だった。

もう何人もの魔女を沈めてきた池の畔に立たされ、大きな石を括り付けられる。

そして俺は池の中へと身を沈めていった。

 

今日の花は「バードック」

花言葉は「私に触れないで」

その花言葉通り、優しさの籠もった手で触れられたく無かった。そうしたら、もっと潔く命を絶てたのに。

 

†fin†