暫く歩くと、六角形の柱状をした、膜が沢山重なった黒い石と、飴色の石が目に付く。
それを手に取ると、脆く、すぐに表面が剥がれてしまう。
不思議そうな顔をする少年に、おじさんは、それは黒雲母と金雲母だねと、そう教える。
「そうだな、黒雲母や金雲母の小さい奴は、園芸用品のお店で売ってるよ。
何に使うのか私は知らないけれど、きっと植物に何かいい事が有るんだろうねぇ」
「園芸用品ですか」
それを聞いて少年は、そう言えば母がプランターに、 薄く剥がれる石とも土とも付かない物を入れていたことを思い出す。
成るほどと思いながら手に持っていた黒雲母を手放すと、おじさんが更に豆知識をくれた。
「あと、雲母を薄く剥いだ物を、香道で使うんだよ。
耐熱性があるから、香木を火にくべる時に、雲母の上に乗せて焚くんだ」
「コウドウ、ですか?
コウドウが良くわからないです」
知らない単語が出てきて戸惑う少年に、おじさんは簡単な香道の説明をしたのだった。