第十一章 金属鉱脈

 おじさんと少年が歩いていると、今度は周辺に黄金色の金属が見え始めた。

それについておじさんは、あれは自然金。自然に出来た金だよ。特に説明する事も無いかな? と言い、歩を進める。

 次に見えてきたのは、銀白色をした糸状の金属。

それについておじさんは、あれは自然銀。自然に出来た銀だよ。特に説明する事も無いかな? と言い歩みを進める。

 次に見えてきたのは、銅赤色の金属。

おじさんはこう言った。

「ここは銅鉱床だね。そこに見えているのは自然銅だから、特に説明する事も無いと思うけど、 ここには他の鉱石もあるからね。

少しここで待っておいで。持って来てあげよう」

 おじさんは洋燈で宙に浮いた鉱石を幾つか取って、少年の元に持ってくる。

 まず少年に見せたのは、鮮やかな藍色をした結晶。

「これは藍銅鉱というんだ。昔から絵画の絵の具として使われている石だよ」

 そしてすぐさまに、緑色の丸い結晶を見せる。

「あと、これは孔雀石。藍銅鉱とくっついて出てくる事が多い石だよ。これもやっぱり、 昔から絵画の絵の具として使われている石だよ」

 それから少年に、これを持ってておくれ。と言って藍銅鉱と孔雀石を渡し、外套の中をまさぐる。

そして出したのは、小さな遮光瓶。

コルクの栓を抜き、少年の手の上に乗った藍銅鉱と孔雀石に、ぽたりと瓶の中身を垂らすと、 石の濡れた部分から泡が出て微かに溶けた。

 少年は驚く。

「おじさん、今の、何か怖い薬なんですか?」

 石が溶けたのが余程衝撃的だったのだろう。少年は思わず藍銅鉱と孔雀石を放りだし、黄色い外套に掴まる。

するとおじさんは、遮光瓶に栓を填めながら、ふふっ。と笑って少年に種明かしをする。

「藍銅鉱と孔雀石はね、酸で溶けてしまう石なんだ。ああ、でも大丈夫。今使った薬は君もよく知っている物だよ」

「……僕も、よく知っている物?」

「ビタミンCって、聞いた事が有ると思うのだけど、それだよ」

 聞いた事の有る名前が出て、少年はほっとした様子。

慌てた事に少し照れてしまっている少年に、おじさんは青紫色に光る石を見せ、次の石はこれだよ。と言う。

 その石を見て、少年は不思議そうな顔をする。いかにも金属光沢を纏っているのに、 この様な色の金属は見た事が無いのだ。

少年がどんな石なのかを尋ねると、おじさんは少年に石を渡して説明する。

「これは斑銅鉱と言ってね、銅が取れる大事な石なんだ。

でも、銅は銅だけの結晶も有るし、斑銅鉱は取れる数も少なめな様だね」

「銅が、こんな色になるんですか?」

 不思議そうな少年の問いに、おじさんはこう答える。

「表面が空気に触れていない間は、銅色をしているよ。

けれども、空気に触れて暫く経つと、こう言う色になるんだ」

 おじさんの説明を聞いて少年は、この石はまるで、夕焼けから夜空に変わる素敵な石だね。と言う。

おじさんも、そうだね。と言って少年の頭を撫でる。

 少年が斑銅鉱を手放し、また歩き始める。

すると今度は、黒っぽい結晶と、自然金とはまた違う、けれども金色の石が見えてきた。

「ここは鉄鉱床だね」

 おじさんはそう言う。

それから、黒い四角い結晶と、やはり黒い板状の結晶、それに金色の四角い結晶を持って来て少年に見せる。

「これが何だか、わかるかな?」

 おじさんの謎かけに、少年は鉱石三つの間で視線を泳がせた後、こう答える。

「黒いのはわからないんですけど、この四角くて金色のやつは、マルカジットに色が似てます」

 その答えに、おじさんはきょとんとした顔で少年に尋ねた。

「マルカジット? と言うのはどういう物なのかな? 初めて聞く名前なんだ」

 ここで初めておじさんから説明を請われた少年は、緊張しながらマルカジットの説明をする。マルカジットというのは、 アンティークジュエリーに使われている事もある、ダイヤモンドの代用品で、白っぽい金色をした石なのだ。と言う。

 それを聞いたおじさんは、なるほどと言った顔で、四角い結晶の説明をする。

「なるほど、君が言っているマルカジットというのは、きっとこの石の仲間の白鉄鉱だね。

この石は、鉱石名では黄鉄鉱と言って、硫黄と鉄で出来ているんだ。

これも白鉄鉱も、良く採れる石だから、ジュエリーにも使いやすいのだろうね」

 私が知らない事も知っていて、君はすごいね。と、おじさんは黄鉄鉱を宙に放る。

 褒められて嬉しそうな顔をした少年が、残りの二つは何か、おじさんに尋ねる。

おじさんは、両方を少年に見せながら説明する。

「この、四角い結晶は磁鉄鉱。鉄が取れる大事な石だよ。少しだけ磁力を帯びていて、 良く君たちが見掛ける砂鉄。あれも磁鉄鉱なんだ。

次に、こっちの平べったい結晶。これは赤鉄鉱。これも鉄が取れる大事な石だよ」

 おじさんの説明に、少年は結晶を手に取り、ぢっと見比べる。

「やっぱり、どっちも鉄が取れる石だから、似てますね」

 おじさんはにっ。と笑って返す。

「そうだね。似ている」

 少年もにこりと笑って。磁鉄鉱と赤鉄鉱を宙へ放った。

 

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